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UWBは利用する周波数帯域がとても広く、超高速・大容量の通信や高精度の測位・測距などが可能なことから、かつては「夢の無線通信規格」だと期待されていましたが、それほど普及が進みませんでした。
しかし近年はAppleの「iPhone」や「AirTag」でUWBが採用されて注目を集めています。ビジネスにおいても製造や物流から医療、エンターテインメントまで幅広い業種で活用が可能です。
今回はUWBの特徴や他の近距離無線通信との比較、活用事例などを紹介します。
UWBとは「Ultra Wide Band」の略称で、「超広帯域無線通信規格」という意味です。従来の無線通信と比較して利用する周波数帯域がとても広く、障害物の影響を受けにくいといった特徴があります。
UWBは1960年代に軍事用に開発された無線通信規格です。民生用に利用され始めたのは2002年からですが、その後はなかなか普及しませんでした。
その理由の一つに規格の制定が難航したことが挙げられます。
周波数の割り当ては国によって異なり、UWBを世界共通の規格として使うためには各国の割り当てを互換性のある数値にすることが必要です。しかしその調整が難航したため、製品への採用が進みませんでした。
UWBの規格標準化は2002年から議論され、2007年3月に初めて国際標準規格が策定されます。利用する周波数は地域ごとに定められ、日本では3.4~4.8Ghzのローバンドと7.25~10.25Ghzのハイバンド、車載利用限定の24.25GHz~29GHzがUWB無線で利用可能です。
またUWBは屋外での使用が認められていませんでしたが、日本では2019年から一部帯域が解禁されました。そして2019年にはiPhone 11にUWBが搭載され、2021年にはUWBを利用したAirTagが発売されています。AirTagは自分の所持品に取り付けることで、紛失した際に見つけやすくするためのアイテムです。
UWBは高い精度で位置測定ができるため近年再び注目を集めています。
UWBの特徴はどのようなものがあるのでしょうか。ここでは3つの特徴を紹介します。
UWBは超高速・大容量の通信が可能で、伝送速度は最大で数百Mbpsにもなります。
UWBはパソコンと周辺機器間のデータ転送やAV機器間のデータ送受信といった場面での利用が想定されています。
UWBは高精度の測位・測距が可能です。位置測定は、ToF方式に三点測位を組み合わせて行うほか、AoA方式やTDoA方式なども利用します。
各測定方式について簡単に説明します。
従来の無線では壁や天井などに反射した電波が干渉して、屋内での正確な位置測定が困難でした。それに対してUWBは信号のパルス波が短く、反射した信号と重ならないことなどから、より正確に位置測定が行えます。
UWBは広い周波数帯域や低い送信電力レベルで通信を行い、他の通信規格とは異なる周波数を利用しています。そのため他の無線などの影響を受けにくく、反対に他のシステムへもあまり影響を与えません。
UWBはWi-Fi、Bluetooth、RFIDといった他の近距離無線通信の位置測定と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。各規格と比較してみましょう。
Wi-Fiとは、インターネット接続に対応しているスマートフォンやパソコン、タブレットなどの機器を無線でLAN(Local Area Network)に接続する技術です。
Wi-Fiの測位精度は2~10mで、位置測定は電波強度や三点測位などを用いて行います。Wi-Fiは様々な場所や機器で利用されているため、他の無線の影響を受ける可能性があります。
Bluetoothは、Bluetoothに対応したスマートフォンやパソコンなどの機器同士を無線で接続する技術です。国際標準規格のため、Bluetooth対応の機器であればメーカーを問わず接続できます。
Bluetoothの測位精度は数mです。エリア内に複数の発信機と受信機を設置して、発信機の電波をどの受信機が受信したのかという方法で位置を把握します。
BluetoothもWi-Fiと同様に利用者が多いため、他の無線の影響を受ける可能性があります。
RFIDは、電波により非接触でRFタグの情報を読み書きするシステムです。バーコードのようにタグを1枚ずつ読み取らなくても、電波でまとめて読み取ることができます。
RFIDの測位精度は数m~10mです。Bluetoothのように、どの受信機でRFタグを検知したのかにより位置を把握します。 RFIDも他の無線から影響を受ける可能性があります。
UWBは具体的にどのようなシーンで活用されているのでしょうか。ここでは5つのシーンを紹介します。
車両の組み立てにおいて、従来の生産ラインで複数種類の製品を生産する場合には生産ラインの管理を手動で行うため作業者に高度な技術が必要でした。
しかしUWBの利用により、製品やツールに取り付けられたタグを照合して複数種類の製品それぞれに適した作業が行えるため効率的な生産を実現できるようになります。
また作業が時間内に終わらなかった場合は、自動的に作業時間の延長やその後の作業時間が再計算されます。これによりラインが停止しにくくなり、作業の最適化も容易になりました。
UWBは15センチメートル以下での位置測定が可能です。倉庫内にある多くの商品や、そこで働く従業員の位置・滞留状況を可視化することができ、商品の位置をリアルタイムに把握できます。
把握した内容を分析し従業員の動線を可視化することで、ピッキングに必要な時間を短縮できるようになります。また商品の配置を最適化することも可能です。
UWBの利用により車両基地など車庫全体の車両位置を正確に把握でき、車両を検索する手間が省けます。例えばバスの車両基地では、駐車したバス同士の入れ替えが簡単ではないため出発する順番を考慮して駐車する必要があります。
UWBの利用により、時刻表に従って最適な駐車位置を割り当てることが可能です。トラブルなどでダイヤが乱れた場合には自動的に最適化ができます。
UWBは医療機器や人体への影響が少ないため医療現場でも利用できます。UWBを利用すると人の細かな動きを把握できるため、転倒予測を立てて予防ケアを行う際などに役立つでしょう。
患者の動きを毎秒数百回の頻度で位置追跡することで、人の動作を分類できるようになります。そしてランダムな動きの増加など小さな変化を検出して、転倒する可能性が高まったことを予測します。なお転倒予測は7日前までに85%の精度で検出可能です。
また患者の動きを記録してリハビリ計画と比較することで、リハビリの進捗状況も確認できるでしょう。
UWBはエンタメ領域でも利用されています。演劇や音楽ライブではパフォーマーがステージ上を大きく動くため、パフォーマーの音声を正しく追跡できないことがあります。
UWBであれば、パフォーマーの位置を15cm以下の精度で追跡することが可能です。パフォーマーの音声を正確に追跡して3Dサラウンドエフェクトを加えることで、より雰囲気のある演出ができます。
また、広い施設内でゲストの位置をリアルタイムに把握することも可能です。それによりゲストのタイプや場所に応じた情報提供を行ったり、演出を変化させたりすることもできるでしょう。
「Ubisense DIMENSION4™」はUWB技術を用いることで高い精度での位置測定が可能です。先述したように、UWBでは様々な測定方式により位置を測定しますが、Ubisense DIMENSION4™ではAoAとTDoAを同時に行います。
さらにAoAは通常1軸で測定を行いますが、2軸で測定する方法を採用したことで精度をより向上させています。位置情報の更新回数は毎秒数千回にもおよび、他のUWBよりも取得するデータ量の多さが特徴です。
こうした技術によって高い性能や精度、信頼性を実現しています。
Ubisense DIMENSION4™を「Ubisense SmartSpaceプラットフォーム」と組み合わせることで、製造現場や医療施設などで人や物の動きを可視化できます。それをもとに人や物の動きを分析することで、業務効率改善など様々なことに応用できるでしょう。
またUbisense DIMENSION4™で使用するタグのバッテリー寿命は、最大15年以上と長寿命です。UWBセンサーはリモートで管理しており、ネットワーク経由で最新の状態にアップグレードできるため、メンテナンスが容易に行えます。
Ubisense DIMENSION4™にご興味がある方は、ぜひ以下のページをご確認ください。
Dimension4 - UWB位置測位システム | Ubisense
UWBは利用する周波数帯域がとても広く、超高速・大容量の通信や高精度の測位・測距が可能など、多くの特徴を持つ無線通信規格です。
UWBは1960年代から存在する技術ですが、民生用として注目され始めたのは比較的最近です。UWBは正確な位置測定が可能なことからApple製品に利用され、それがきっかけとなり注目を集めています。
UWBは製造や物流のみにとどまらず、医療やエンターテインメント業界などでの活用も期待されています。UWBの導入を検討しているのであれば、最高精度で位置測位が可能な「Ubisense DIMENSION4™」の導入をぜひご検討ください。